「あなたがいま辞めたい会社は、あなたが入りたかった会社です」
これは昔、ある派遣会社が掲載した求人広告のキャッチコピー。
実はこの言葉、すごく採用広報の核心を突いていると思うんです。
採用広報って、「良すぎてもダメ、悪すぎてもダメ」な世界。
いまの等身大の自分たちをちゃんと伝えつつ、
これから一緒に働きたいと思ってもらえる未来も描かなくちゃいけない。
よく見せすぎると「なんか思ってたのと違うな…」って辞めていく。
悪く見せすぎると、そもそも誰も来ない。
そうなると、うーん、なんか毎回ピンとこない人しか来ないなっていう、
例のしんどい採用ループに突入します。
らしさ=「等身大」を伝える、ってこと
たとえば、中小の建設会社でこういう求人広告を見かけたことありませんか?
地図に残る仕事です。

いや、かっこいいけど、御社が言う?
正直、地図に残る仕事がしたいなら、ほとんどの人が大企業を選ぶわけで。
結果、「カッコはついてるけど誰にも刺さらない」採用広報が出来上がる。
何百万とかけて作った採用サイトも、気づけば誰にも見られず……。
つまり中小企業が「大企業っぽいこと」を言っても、届かないんです。
なぜなら、それ、だいたい誰かがもう言ってるし、求職者も聞き飽きてるからです。
じゃあ「らしさ」ってどうやって言語化するの?
これがほんとに難しい。
「うちの会社らしさって、なんだろう?」って自問して、止まる企業は多いです。いざ言語化してみても、「どこも同じこと言ってない?」ってなっちゃったりして。
じゃあ、どうやって言語化をすればいいのだろう? 悩みに悩んで考え抜いた結果、ようやく辿り着いたのが、「らしさ」とは“事業”と“人”との掛け算じゃないかってこと。
つまり、「どんな人たちが、どんな想いで、どんな価値を提供している会社なのか」この掛け算で、中小企業の会社のらしさが浮かび上がるってこと。いまからご紹介する2つのフレームを使った考え方に当てはめてみると、かなりその答えに近づくと思います。

2つの「3Cフレーム」で「らしさ」を考えてみる。
一つ目、マーケティング目線の事業3Cフレーム
- Customer(顧客):誰に、何を届けてる?
- Company(自社):自社の強みって、なに?
- Competitor(競合):他とどう違うの?
これはよくマーケティングで使われるフレーム。「何をやっている会社、強み、優位性」なんかが言語化できます。
二つ目、HR的思考の3Cフレーム
- Culture(カルチャー):どんな空気?
- Credo(クレド):どんな判断軸?
- Character(キャラクター):社長や社員、どんな人たち?
これはなかしが勝手に師匠呼びしている先輩が独自理論で編み出した採用版の3C。このフレームでは「誰がやってる会社なのか? どんな社員がいる会社なのか? どんな雰囲気の会社なのか?」が見えてきます。
ご紹介した事業3CとHR的思考の3C、この2つの3Cフレームで言語化をしながら要素を組み合わせていくと、会社の“価値提供”と“人格”が見えてきます。そしてこの両輪のコトバを使って、らしさを考えていくと、自分の会社のブランディングが浮かび上がってくるのです。では、どうやって“両輪”で伝えるか。具体的には、次のブロックで伝えていきます。

両輪で伝えるためにやるべきことの例
① サービスやプロダクトの裏側を出してみる
開発秘話、失敗談、改善の試行錯誤……
「壁にぶつかってきた歴史など」は、それだけで信頼されます。
「自慢や強み」よりも「リアルな歩み」に人は共感します。
② 経営者の“腹の底”を言葉にしてみる
「ビジョン」よりも「覚悟の理由」のほうが、響きます。
- なぜこの市場を選んだのか?
- なぜ今このモデルに賭けているのか?
キラキラした理想より、泥臭い決断の方が、人の心を動かします。
③ 社員の目線で“事業”を語ってみる
現場のリアルは、何よりの採用資産。
- 普段、どんな景色を見ているか?
- どんなときにやりがいを感じるか?
- 何に苦しみ、何に笑っているか?
リアルであればあるほど、共感を得やすくなります。
※以下、2つのフレームで制作した求人原稿例(全文紹介あり)
まとめ:事業3CとHR的3Cで出てきた言葉をかけ合わせてみる
未来の仲間たちは「感じのいい会社」じゃなく、
「一緒に未来をつくれる会社」を探しています。
そのために必要なのは、事業3CとHR的3Cを両輪で伝えること。
- 事業3C → 事業を通じて何をどう届けてるかを伝える
- HR的3C → 人と空気感を伝える
この2つを言語化し、その言語を軸にしながら具体的なコトバやストーリーで発信していく。そうするとらしさが伝わるようになり「未来の仲間たち」のエントリーが獲得できるはず。ちょっと難しいですね。でもなんとなく伝えたい意図は分かっていただけたでしょうか?
さて次回は──
言語化した“らしさ”を、どう伝えるのか?
SNS、社員インタビュー、動画……あふれる手段の迷宮から抜け出すヒントをお届けします。
「発信してるのに、誰にも届いてない」問題を解決したい方は、お楽しみに。



