「なかしさん、うちには語れる社員なんていないんですよ」――そんな声、採用広報をやっていると時々聞きます。
でも、本当にいないのでしょうか?
答えはノーです。語れる社員はきっと社内にたくさんいます。ただ、それを見つけてあげられていないだけなんです。
この違いは、採用の成果に決定的な差を生みます。
社員のリアルな“声”は最高のUGC
前回の記事で触れたUGC、つまり「ユーザー生成コンテンツ」。
企業の採用広報で言えば「社員が語るリアルな声や体験」のことです。
これは求職者に刺さる“生きた証言”であり、共感の源泉。
採用広報やライターが作った“作られたストーリー”ではなく、社員自身の言葉で語られることが超重要なのです。
「語れる社員がいない」と諦めてしまうのは、せっかくのUGC素材を掘り起こす手間を放棄しているのと同じ。
社員一人ひとりの小さな物語を丁寧に掘り起こすことこそも、採用広報の仕事なのです。
外向きの採用広報は、実はインナーブランディングにもなる
ここで大事な話をします。
社員が自社について語ることは、単に採用活動のためだけではありません。
本人のエンゲージメントが高まり、仕事への誇りを育み、離職防止にもつながるという副次的効果も期待できるのです。
さらに、普段はなかなか言葉にならない「自社らしさ」や組織文化を可視化できるという大きなメリットもあります。
つまり、外向きに発信された社員の物語や声が、社内にポジティブな循環を生む。
外と内が繋がって、育ち合う。そんな広報こそが、会社の“らしさ”を本物にしていく。僕はそう信じています。
物語は「掘り出す」もの。だから語れる社員は“見つけて”いく
語れる社員は勝手には語りません。
新卒入社から40年近く会社に寄り添い続けたベテランも、
育児と管理職の板挟みに奮闘しながら毎日全力のワーママも、
普段は裏方仕事ばかりで成果が表に出ない事務員さんも、
それぞれに仕事のストーリーや人生があります。
会社にとっては「普通」かもしれないその働き方が、実は求職者が求めているキャリアや人生だったりする。
だって40年も転職せずに働き続けているのってすごいじゃないですか?
育児もしながら管理職をやっているのってすごいじゃないですか?
事務員さんだって営業みたいに評価されずに頑張り続けているのってすごいじゃないですか?
そういう社員を見つけ出し、語る社員として引き上げていくことも採用広報の重要な要素なんです。
普段から社員同士がお互いを尊重し合い、ストーリーを認め合い、語り合う空気を作る。
その積み重ねが、やがて会社の個性を鮮やかに浮かび上がらせ、強い採用ブランドを生み出します。
ここからは少し具体的に。語り手の選び方とストーリーの組み立て方
じゃあ実際、どうやって「語り手」を見つけるのか?
採用広報で語り手になる社員は、必ずしも社内で声が大きい人や目立つ存在とは限りません。
むしろ、静かだけど芯のある人、控えめだけど深い想いを持つ人、そういう“隠れた宝石”こそが本物の“らしさ”を伝えます。
まずは、社内のいろんな層にアンテナを張って、
「あなたの仕事のここが好き」「会社のこんなところが自慢」など、日常のリアルな言葉を拾うことが重要。
そしてストーリーを組み立てるときは、
- その人らしい働き方、
- 日々感じている葛藤や喜び、
これらを軸にすると共感を呼びやすい。
たとえば、
- 40年のキャリアを通じて見えてきた会社の変化と自分の成長、
- 育児と仕事を両立しながら感じた壁と突破口、
- 地味だけど会社を支える“縁の下の力持ち”としての誇り、
これらは派手じゃないかもしれません。
でも、リアルさこそが“らしさ”を浮かび上がらせ、求職者の心に響くのです。
物語はドラマチックである必要はありません。
むしろ、ありのままのリアルを丁寧に切り取ることが、いちばん確かな方法なのかもしれません。
次回予告:とっても重要な「採用広報×数字」のお話し
次回はちょっと趣向を変えて「数字」の話をします。
「採用広報って感覚でやるものでしょ?」と思われがちですが、実は数字でも語れるんです。
ROI(投資対効果)をきちんと理解し、予算を合理的に設計することは、採用広報の成果を上げる必須条件。
採用広報は売上をつくる営業活動と同じく、ストック型の投資なのです。
次回はその「数字」というレンズを通して、採用広報の価値と予算設計についてじっくり語ります。
お楽しみに!



