〜“らしさ”の発信は、場所選びから始まる〜
前回の記事では「会社の“らしさ”を言語化する方法」についてお話ししました。
でも、言語化したからといって、急に応募がドバドバ来るわけではありません。
そう。言語化した「らしさ」は、伝えてこそ意味があるのです。
では、その“伝える”って、どこでどうやればいいのでしょう?
SNS? 社員インタビュー? 動画?
選択肢は多いのに、正解は見えない。まるで「情報発信の迷宮」です。
というわけで今回は「迷わないための発信設計」のヒントをお届けします。
STEP1:「どこで発信するか」から考えるのが、採用広報の第一歩。
「そもそも、どこで“らしさ”を発信すればいいのか?」
これは、採用広報を始める多くの企業が最初にぶつかる壁です。
ちなみになかしの場合はブログとX。まだ始めたばっかりなので薄弱アカウントですけど。
広報と言えばやっぱりSNS、note、動画かな…。
でもその前に、まず考えてほしいのが、「ターゲットの可処分時間の使い方」。
求職者は、仕事を探す時間だけ“採用情報”に触れているわけじゃありません。
通勤中にスマホでSNS、夜にYouTube、休日にはブログを読むかもしれない。
この“日常の時間の使い方”の中に、あなたの会社をPRを差し込むイメージが大事なんです。
STEP2:迷宮マップを描く。〜PESOモデルという地図〜
手当たり次第に発信する前に、「媒体の種類と役割」を整理してみましょう。
ここで使えるのが PESOモデル です。
- P(Paid)=広告:有料。リスティング広告、求人広告、CMなど。
- E(Earned)=信頼:新聞・テレビなど第三者メディアの掲載。
- S(Shared)=接点:SNS。X、Instagram、TikTok、LinkedInなど。
- O(Owned)=資産:自社のHP、採用サイト、noteやブログ。
それぞれ発信の「目的」と「相性」が違います。
SNSは接点をつくる場であり、ホームページやブログは信頼や理解を深める場。
このマップを描くだけで“らしさ”の伝え方に道が見えてきます。
Paid Media:最初の出会いをつくる場
簡単に言うと「お金を掛けて初めまして!」を伝えるメディア。リクナビ、マイナビ、doda、indeed、SNS広告、YouTube広告など、お金をかけて露出を得る手段がPaid Mediaです。「待つ」広報ではなく、こちらから届けに行くためのアプローチであり、母集団形成の初期フェーズでとても有効です。またEarned Mediaには及ばずとも即効性のあるアプローチです。
たとえば:
- 求人検索をしている人にGoogle広告を出す
- Instagramでターゲット層に「会社の雰囲気」を動画で伝える
- YouTube動画を広告で拡散し、オウンドメディアへ誘導する
といった形で活用できます。
重要なのは、広告単体で終わらせないこと。広告はきっかけにすぎません。そこから先に、SNS(Shared)やホームページ・note(Owned)へ導線をつなぎ、さらに深く会社の“らしさ”を伝えていく必要があります。
つまり、Paidは「入口」。そこから共感を育てる場(Owned)や信頼を築く場(Earned)へ橋渡しするのが理想的な活用法です。
Earned Media:信頼のメディアで注目度UP
たとえば、ローカルテレビに社長が出た。WEBメディアに社員インタビューが載った。そんなとき、SNSで「出ました!」と叫ぶだけで終わっていませんか?
新聞やテレビなどのEarned Media(メディア露出)は拡散力が“最大瞬間風速”です。それまで全く無名でも、次の日やその次の日には、有名になれるメディアです。でも、その瞬間を逃すと、誰も覚えてくれなかったりします。だから「瞬間風速」を「資産」に変えていかなくてはなりません。そのためには情報の再利用が不可欠。
- メディアに載った記事をnoteで語る
- 出演の裏話を社内ブログにまとめる
- SNSで分割コンテンツとして再編集する
こうした二次活用が“一過性の注目”を“じわじわ効く資産”に変えてくれるのです。
Shared Media:SNSは、共感のエントランス
SNSは、出会いの場。ここで会社を知ってもらい、少し好きになってもらう。
まずは、どのSNSを使うか、目的とペルソナから逆算してみましょう。
- X(旧Twitter):速報性と拡散力。テンポのよい発信が◎
- Instagram:社風、オフィス、イベント写真。ストーリーズも効果的
- TikTok:ライトなカルチャー発信。採用目的なら「社風紹介」が吉
- Facebook:30代以上の親近感づくりに
- LinkedIn:プロフェッショナル層、グローバル層に
- YouTube:短尺動画で社内紹介や社員インタビュー
- Podcast:代表メッセージや業界話など「ながら聴き」向けに
どのSNSにも「得意なこと」「苦手なこと」があるので、選び方は“恋人選び”に近いかもしれません。付き合ってみたら意外と合わない、なんてことも……(笑)。
Owned Media:自社媒体は“じっくり型”の採用広報
やっぱり採用活動における“本命”はホームページ。
どれだけSNSがバズっても、興味を持った人は必ずHPを見に来ます。
でも、更新が止まっていたり、採用情報が昔のままだったりしたら……?
一発アウトです。だからまず最初に整えるべきはホームページ。
ここを整備するだけで、会社の“見え方”がガラリと変わります。
加えて、ブログやノートで「会社の物語」を伝えていくのが良いのかも。
創業の想い、現場の声、価値観の共有──こうした「深い情報」が、
“うっすら興味”を“本気の共感”へと変えてくれます。
社員の「素の声」が最強のPR──UGCの力、あなどれません
最近よく見かけますよね、社員がX(旧Twitter)やnoteで、「入社理由」とか「社内イベント」のことを自然体で発信している会社。いわゆるUGC(User Generated Content)、つまり「社員自身がつくる発信」です。
厳密にいうと、「自発的に見せてる」だけのケースもあります。人事や広報が陰でネタ出ししてることも多い。なかには、社長のXアカウントに社員が「昨日のランチごちそうさまでした!」なんてコメントを残して“仲良し感”をそのまま広報に転用してるような、玄人テクもあります。でもそれでもいいんです。広告っぽくないから刺さるんです。
たとえば、10人の社員が1日1回、Xに投稿するとしましょう。
1投稿あたりのインプレッションが100回だったら──それだけで1日1,000回、会社の情報が誰かのタイムラインに流れる計算になります。
社員が100人いれば?
1日で1万インプレッション。月で30万。
広告費に換算したら……けっこうな金額ですよね。
(しかもクリック単価とか気にしなくていい!)
これはもう、企業の広報チームにとって「夢か現実か」という話です。
でもここで大事なのは、「じゃあ全社員にSNSアカウントを持たせて、1日1回発信させれば、広報部いらないじゃん!」と極論に走らないこと。
実際には、
- 発信の質をどう担保するか、とくに機密情報の部分
- 個人アカウントとしての自由と、企業としてのルールをどう両立させるか
- 発信が業務負荷にならない工夫
- コツコツ継続していくための仕組み(これが一番重要化も)
などなど、仕組みと文化のデザインが不可欠です。
UGCを活かすために必要なのは、社員に「発信していいんだよ」と伝える文化。
そして「発信したくなるネタ」と「それを後押しする風土」。
広報が不要になるんじゃなくて、広報が“社員みんなで情報発信できる組織”をつくる。その時代になったというだけなんです。
最後に、これ正直、ちょっと青くさくて理想論っぽく聞こえるかもしれませんが──
事業を広げたい、仲間を集めたい、でもお金も人も足りない。そんな中小企業やスタートアップこそ、UGCに本気で取り組むべきだと思っています。
だって、うまく循環し始めたら極端な話、営業マンも、広告費も、採用広報の外注費もいらなくなるかもしれない。その分のコストを、ぜんぶプロダクトやサービスに投下できるんですから。つまり、UGCが企業成長の燃料そのものになる可能性だってあるんです。
まとめ:まずは“家(ホームページ)”を整えてから“出かけよう”
SNS、動画、メディア露出──いろんな発信の手段がありますが、
まず手をつけるべきは、会社の「家(ホームページ)」です。
そこを土台にしながら、
- Paid Media:即出会う
- Earned Media:信頼を獲得
- Shared Media:接点と共感を形成
- Owned Media:理解と共鳴を育てる
- UGC:リアルな声で拡散する
という流れで“らしさ”を多面的に伝えていくのが良いと思います。
今回ご紹介したことを全部まわしていけるのが一番いいのですが、残念ながら中小企業にはそんな人材やノウハウを持ち合わせている会社はほとんどありません。そこで頼りにしてほしいのが僕たちのような外部ブレーン企業。ちなみになかしの会社では月額4万9800円(税別)~、採用広報支援サービスを提供しています。リクナビ・マイナビ・doda・インディードなど求人媒体の効果最大化のための制作代行や、ブログやXなどでの発信など、様々な支援を行っていますので、ぜひお気軽にご相談くださいね。
次回は、「発信の中身」をもっと具体的に掘り下げていきます。
何をどう語れば“らしさ”が伝わるのか?ストーリーの組み立て方、語り手の選び方、
では次回もお楽しみに!



